発達障害の私が苦手な電話応対のパターン化による克服
障害者雇用の事務職として働いている私ですが、電話応対が大の苦手です。
メールのようにじっくり何度も読み返せるものならさほど問題ないですが、一瞬で情報が流れていく電話はすぐにアタフタしてしまいます。
私のように電話応対が苦手な発達障害の方はとても多いようです。
障害者雇用の求人票にも、電話応対必須と書かれている会社が沢山ありますが、そこが不安で応募できない方も多いのではないかと思います。
そんな方に、無茶苦茶な電話応対でも何とかやっている私のような人間もいるということを知り、勇気を持ってもらえたら嬉しいなと願い、私が体得した具体的なテクニック(?)を書いてみようと思います。
私の具体的な電話応対の流れ
私「●●社でございます。」※ゆっくりすぎるのでは?というくらいのんびり丁寧に喋る
相手「○○社の田中です。お世話になっております。」
私「お世話になっております。」
頭の中(田中さんかぁ・・・)←何となくメモと頭に残す感じ
相手「△△の件でお電話しました。山本様いらっしゃいますか?」
私「山本ですね、かしこまりました。」
頭の中(山本さん宛てか。用件はまぁいいや)
私「申し訳ございません。もう一度お名前を教えていただけますか?」
相手「○○社の田中です。」
私「○○社の田中様ですね(確認するようにゆっくり喋りながら、必死にメモ!)。ありがとうございます。」
私「少々お待ちいただけますでしょうか。」
私「山本さん!○○社の田中様からお電話です!(用件はまぁいいや)」
一言一言を噛みしめるように、自分のペースを守り、ゆっくり喋るのがポイントです。
相手が早口・せっかちそうでも、私の任務は必要事項を聞き取ることですから、その任務の遂行のため、私はゆっくりと喋ります。
「お世話になっております」は、丁寧に言うと結構時間が稼げます。
この間に、相手の名前を少しでもメモするようにしています。
1回では無理だ、もう一度聞けば良い、と開き直る
残念ながら私には、一度に会社名・名前・用件・誰宛かをすべて聞き取ることはまず不可能です。
ですので、1回目は誰宛かだけを聞き取ることに集中します。
そして、相手の会社名と名前を再度お聞きし、メモします。
最初に名乗られたときになんとなくメモしたものと照合し、記録します。
用件まで聞き取ることは、ほとんど諦めています。
単純な用件のときは頭に残るときもありますが、それ以外は会社名と名前だけ伝え、電話を替わってもらっています。
聞き直して2回目にメモできれば良いや、と初めから気楽に構えるのが、私にはとても効果的です。
私の場合は1回で聞き取れたら奇跡くらいに考えているので、一発で聞き取ってしまう周りの方々と比べて完全に劣っていても、あまり気にせず過ごしています。
苦手でも、できる範囲でやってみる
私が社会人1年目のときに上司から言われたことがあります。
「できません」ではなく「やってみます」と言いなさい、失敗しても良いから、と。
周りには、私の不安定な対応を、迷惑に思っている方もいるかもしれません。
私自身も、ほぼ必ず聞き返すことに恥ずかしい・情けないと思ってしまうことがあります。
それでも、「何とか取り次げた」と前向きに考え、自己肯定感を下げないようにしています。
苦手なことでも、続けていればコツが見えてくるかもしれません。
慣れによって上達する部分があるかもしれません。
電話の性質にも左右されるかもしれません
私の会社に掛かってくる電話はほとんどすべて法人であり、個人からの電話がほぼ無いのは助かっています。
ただし、とにかく丁寧に・相手の方に誠意を持って電話を受けることは気を付けています。
(「用件はまぁいいや」と考えるのは誠意がない、とは突っ込まないでください 笑)
個人のお客様からの問い合わせが多いコールセンターのような仕事は、私には難しいと思います。
感情的になりクレームを言おうとされている相手に対し、「もう一度お名前を」なんて聞きづらいです。
私は臨機応変な対応が大の苦手です。
上記のように、法人相手ですと基本的にワンパターン(挨拶し名乗る→用件や電話相手を指名する)な電話ばかりだからこそ、こんな私でも何とかなっているのは大きいと思います。
また、私宛ての用件の電話の場合も、瞬間的にうまく返事ができないなという時が多いです。
そういうときは、迷わず「確認後、折り返し連絡します」と答え、じっくり考える時間を取るようにしています。
発達障害だから電話対応は無理!では勿体ない
名前を聞き返すと、明らかに嫌そうな態度を取られたり、ため息をつかれたこともあります。
相手の方の声が小さかったり、周囲が騒がしいときなどは、何度も聞き返してしまうこともあります。
ですが、電話の相手からの評価は悪いかもしれませんが、丁寧な対応さえしていれば、同じ会社の周りの人からの評価は落ちないだろうと信じています。
たとえ失敗しても、積極的な姿勢を評価してくれる人は思いのほか多いです。
こんな不安定な対応をしている私でも、「しっかりしろ」なんて言われませんし、むしろ「出てくれてありがとう」なんて言われることもあるくらいです。
発達障害だから電話対応を免除されている、といった障害者雇用の事例も多いようです。
ですが、電話対応必須と書かれた障害者向け求人は、私が当初思っていた以上に多いです。
私も入社前は電話応対ができるか不安でしたが、電話応対ができないと履歴書に書いてしまうと就職の選択肢が大きく減ってしまうため、特性から苦手だと思うとだけ伝えていました。
結果としてはこれが正解で、周りの方々の優しさもあり、何とか社会人生活を送れています。
何もかも完璧にできる人なんていません。
電話は苦手だけど、力を発揮できる仕事ではしっかり貢献しますからお許しを。
私はそういう気持ちで、毎日電話を取り続けています。
コメント
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yuuさん
お久しぶりです。
電話対応について、とても丁寧に書かれていますね。障害者ではなく健常者で大学等を卒業した新人においても超えなくてはならないハードルの1つが電話対応です。電話対応も慣れないうちは緊張する仕事であり、時には、ミスったりして上司にお叱りを受けるなんて事もある仕事ですね。会社によっては、入社時の研修で電話対応もきちんと行う会社もあります。
ちなみに、自分の時は、入社時に研修で電話対応をする事になっていたのですが、急きょその時間がなくなってしまい、配属された部署で回りの社員が行っていた電話対応に聴き耳を立てて、そこから対応の術をコピーしたという感じです。かかってくる電話も色々あって完全に外部からかかってくるものや社内でも別の部署からかかってくるものさらには、オフィスの外から宅配業者からかかってくる場合もあります。
逆に自分から別の部署(時には別の会社)へお問い合わせでかける事もあります。
電話対応は、何十回、何百回、何千回とやっているうちに慣れてしまうので、できるかぎり電話をとる事が重要だと思います。
masa123さん
コメントありがとうございます。また、コメント通知のメールを見落としていて、返信が大変遅れてしまったこと、申し訳ありません。
電話応対は健常者であっても苦手とする方が多いですよね。
ネットで検索してみても、色々なテクニック・克服方法などが載っています。
私のような発達障害者には、「聴覚的に聞こえない」わけではないが「聞き取りが極端に苦手」という特性を持つ方が多いようで、障害者雇用で配慮して欲しいこととして「電話応対ができない」や「仕事の指示は口頭ではなく文章で」等を挙げる事例が良く見られます。
これは、発達障害の強い特性を持たない方からすれば、理解が難しい感覚だと思います。
私自身、残念ながら根本的な解決はないように思っています。
電話応対について、周りの方が「走って成長していく」のに対し、発達障害の方は「地面を這うスピートの成長」に留まるかもしれません。
また、聞き取りの苦手さといった特性は、経験により治るものでもないようなので、経験により他の方が「フルマラソンを完走できる」のに対し、私は「10kmが限界」なのかもしれません。
それでも、「1回で聞き取れないなら、聞き取れるまで聞き直す」、「できる範囲で挑戦する」。
相手に何度も聞き返すのは周囲で私くらいですが、やり続けることに意義があるのだと信じています。
masa123さんのおっしゃる通り、「回数をこなすことで慣れてしまう」のは大いにあり、私もそれがとても大切だと思っています。
聞き取りは苦手でも、経験により、肩の力は抜け、決まり文句は出てきやすくなるなど、少しは良い方向に進めるはずです。
そして、「『何千回』とやっているうちに慣れてしまう」というコメントが、とても印象的でした。数百回はまだスタート地点とも取れるように思います。
障害者雇用として長く充実した気持ちで働くのに大切なのは、「とりあえずやってみる」ことだと考えています。
発達障害者向けの就職本に載っているような配慮事項「電話応対できない」ではなく、「特性により電話応対は苦手かもしれません」程度に抑え、前向きに取り組む。
そういった気持ちが「発達障害者でも幸せに生きる」ことにつながっていくのでは?との思いから、この記事を書いてみました。
ほとんど記事を更新できていないのに、また読みに来てくださったこと、とても嬉しかったです!
yuuさん
こんにちは。非常に前向きなコメントで素晴らしいと思います。しかし、私も同じ発達障害の当事者なのですが、現在電話対応の配慮について悩んでいます。面接の際、電話が苦手な旨を伝え、それでも、頼まれる完了報告の内線電話などは対応していました。しかし、最初に付いた業務は、難しい面が多く、一時的に別の仕事をさせようという話になり。(比較的軽度な業務)現在の事務の仕事をすることになりました。こちらの仕事は適正が認められ、沢山の仕事を色んな方から頼まれるようになりました。しかし、本日急遽長らく対応していなかった電話対応の仕事をしかも、外部の方への督促電話をするとのこと。
仕事なので、と涙をこらえて対応に臨んだのですが、休憩中も業務後も涙が止まりません。明日も明後日も数日間は、この状況は変わらないのですが…どうしたら良いでしょうか。いきなりメールしてきて、本当にまとまらない内容で申し訳ありません。
tomoさん
初めまして。コメントくださりありがとうございます。
tomoさんも障害者雇用として入社されたと想定します。
「上司に障害特性による業務の苦手さを相談できる」のが、障害者雇用の特権だと思います。
何でもかんでも権利として振りかざすのはダメですが、涙が止まらないほどにどうしようもない時は、上司や人事担当者(事情を良く知っている方)に相談すべきです。
会社にとっても、「事務の仕事は適正が認められ、沢山の仕事を色んな方から頼まれ」ているtomoさんを失うのは避けたいはずです。
理想は、相談機関(発達障害者支援センターなど)の、発達障害に深い知識を持った支援者を交え、面談の機会を設けていただくことだろうと思います。
障害者雇用ではない場合でも、ハローワークには障害者専門窓口があります(障害者手帳の有無に関わらず利用可能)ので、そちらで相談すればジョブコーチなどが会社の上司の間に入っていただけるかもしれません。
ここからは冷たい言い方になってしまいますが、やはり「顔の見えない相手より、信頼できる身近な方」に頼るべきです。
正直なところ、「なぜtomoさんが外部への督促電話が、泣くほど苦痛なのか」が私には分かりません。
私は、「正当な用件を持って、こちらから電話を掛ける」ことで、ひどく苦痛に思った経験はありません(仕事だと割り切れるレベルばかりでした)。
私は面識のある法人担当者にしか督促電話を掛けた経験がないので、実際にtomoさんと同じ場面になったときは、どのように感じるかは分かりませんが・・・。
私が電話応対が苦手なのは、記事に書いたような「聞き取りや臨機応変な対応の苦手さ(特に、相手や用件が分からない急に掛かってくる電話)」が大きいと考えています。
こちらから電話を掛ける場合は、事前に用件の内容をメモ書きしておくなどで何とか対応できているように思います。
tomoさんが苦痛なのはなぜなのか・・・、相手から怒られたりするのが怖い?見ず知らずの方と話すのが嫌?こちらが会話のペースを握らなければいけないのが苦手?周りの同僚に嫌なことを言われた経験がある?
tomoさんの特性による、もっともっと深い事情があるのかもしれません。
残念ですが、じっくりお話ししたことのないtomoさんの事情は、私には分からないのです。
「tomoさんの」特性をよくご存じな方であれば、適切なアドバイスをくださるはずです。
だからこそ、私ではなく信頼できる支援者を見つけてください。
私も専門家でもなくただの当事者ですので、全く同じ悩みでなければ、あまり良いアドバイスはできません。
私なら、近くのハローワークの障害者専門窓口に電話してみて、有給を取るか昼休憩などに実際に行って相談してみます。
難しい場合は取り急ぎ、たくさんの方が目にする、ヤフー知恵袋などの相談サイトに投稿されてはいかがでしょうか。
発達障害に理解の無い方も回答されるかもしれませんが、同様の悩みを克服された方から良いアドバイスがいただけるかもしれません。
繰り返しになりますが、障害者雇用であれば泣くほど辛い業務内容については、なぜそんなに辛い思いをしているか自身で考えてみてから「上司に相談してみる」ことが大切だと思います。
周りの方々は、tomoさんがそこまで苦痛に感じているとは思ってもいないのではないかと思いますので、こちらから相談すべきです。
その際に、障害特性に詳しい相談機関の支援者に同席していただくことができれば、よりスムーズに話が進むはずです。
緊急性の高そうな内容でしたので急いでお返事しましたが、資格試験が近いため以後コメントいただいても回答が遅くなるかもしれないこと、ご承知おきください。