障害者雇用で大企業入社という甘い考えと現実
Yahoo知恵袋などの質問サイトを見ていると、「一般枠で働いているが、障害者手帳を活用し、大手企業に就職したい。」といったものがいくつかありました。
実際に障害者雇用で求職活動をしてみて、私は「障害者求人と言えども、大手企業への就職は相当難しい」と感じました。
その理由について、具体的な例を挙げながら、書いていきます。
私はとある政令指定都市に住んでいて、以降の情報はその市内勤務・事務職での求人です。
周囲の県や都市に比べると求人数は多い方ですが、東京都や大阪府には遠く及びません。
それでもそこそこ大きい都市ですので、田舎住まいの方は求人はもっと少ないと思います。
就職情報は地域差やタイミングが非常に大きいものですので、あくまで参考程度とお考えください。
また、すべて中途採用での情報です。
一般と同様、新卒の場合はもっと良い条件の求人が多い(新卒のみが受けられる求人も多い)と思います。
そもそも正社員募集が少ない
ハローワークの障害者求人を見ると、県内勤務の事務職は常に100件程度の求人が出ていますが、そのうち半数は時給制のパート募集です。
しかもその中には、薬剤師免許が必須など、多くの人が申し込めない求人も含まれています。
ちなみに、事務系以外に作業系求人も別で出ています。作業系の方が、求人数は少し多いようです。
時給は低めのものが多いですが、一般的なパートのスタート時と変わらない上に通院や仕事内容などの配慮をいただけるという良心的な求人もあります。
残り半数のうち、半分以上は、嘱託や契約社員です。
正社員は半分弱の20件程度といった感じです。
障害者雇用で大手企業で働く以前に、障害者雇用で正社員として働くこと自体、狭き門になっています。
ただ、最初だけ契約社員といった会社もあるようです。
以前合同説明会に参加した際、契約社員と書かれている会社の人事の方に伺ったところ、「形式的には契約社員ですが、給与や賞与など、正社員と同条件で1年間働いていただきます。勤務状況によほどの問題がない限り2年目以降は皆さん正社員に変更になります。人によっては契約社員のままのほうが気持ち的に楽という方もいるので、その辺りは個別に対応しています。」とのことでした。
サーナなどの障害者求人サイトを見ていると気付きづらいですが、お住まいのハローワークの障害者求人を見ていると、なかなか厳しいものだと感じる方が多いのではないかと思います。
なお、インターネットの求人サイトは、掲載や採用時に企業がかなりのお金を支払っていますので、私のようなブランクの多い人は採用されるどころか書類審査すら通らないと思います。
金銭面は大手でも低め
私が以前に一般枠で中途採用された中小企業と、障害者枠で募集している大手企業(従業員数1万人以上)の具体的な求人情報を書いてみます。
どちらも私が住んでいる市内に勤務地がある企業で、ハローワークの求人です。
仕事内容はどちらも事務職です。
なお、この某大手企業は普段は求人票を出しておらず、年に1回行われるハローワーク主催の合同面接会のみで出ているものです。
企業 | 中小・一般枠(総合職) | 大手・障害者枠(一般事務) |
学歴 | 大卒以上 | 高卒以上 |
基本給 | 18万円 | 16万円~ |
昇給 | 4,000~10,000円 | 2,500円 |
賞与 | 4ヶ月分 | 2ヶ月分 |
休日 | 土日 | 土日祝日 |
具体的に労働条件を書いてみましたが、これを見てどう思いますか?
大手ですので年間休日数は多いのですが、大企業と言えども金銭面は決して高くはないと思われるのではないでしょうか。
この某大手企業ですが、これでも「他のハローワーク障害者求人に比べ、相当良い条件」です。
そもそも障害者求人で賞与や昇給がある企業が少ないです。
「賞与:5万円」といった企業ですら、良心的に感じてしまうほどです。
給与は経験により決定となっていますが、今後の伸びはそこまで期待できないと思います(昇給額は2,500円~ではなく、一律で2,500円のようです)。
一般枠で数年勤務経験があるような方や家庭をお持ちの方には、なかなか厳しいと感じてしまう条件だと思います。
経験や実績を十分お持ちの方は、サーナなどの障害者向け求人サイトから、もっと良い条件の会社が見つかると思います。
そういった面で自信の無い方は、一度地元のハローワークで障害者求人を調べてみることを強くお勧めします。
少ない採用人数に殺到
先ほど具体的に書いた大手企業ですが、昨年のハローワーク主催合同面接会では、この求人にかなりの人が殺到しました。
当日だけで少なくとも30人以上の面接が行われ、かつ時間切れで後日持ち越しの方も居たようです。
この会社の募集人数は、たったの2人でした(ハローワークの方に伺ったところ、採用されたのは結局1人だったそうです)。
別の大手企業でも、似たような労働条件に対し人が殺到しましたが、そちらは募集1人だけでした。
条件の良い大手企業には、1~2人の採用枠に対して、100人以上が応募することもあります。
どうしても大手企業の障害者雇用で働きたい方は、同じように考えている方と限りなく少ない枠を争うという覚悟はしておくべきです。
しかも、障害者向けの合同面接会には、新卒の方もたくさん参加します。
相当厳しい戦いであることは、容易に想像が付くはずです。
ちなみに、給与などの条件が良い会社の場合、求人の学歴に高卒以上と書かれていても、実際に面接を受けているのは大卒の方が多かったです。
待ち時間中、どんな質問をされるか様子見していましたが、出身校と思われる有名大学の名前もちらほら聞こえてきました。
自分の目で確かめるべき
最初にも書きましたが、これはあくまで私の住んでいる都市での具体例です。
あなたがお住まいの場所には、障害者雇用に力を入れている大手企業が固まっていたり、特例子会社により多くの障害者を雇ってくださる会社があるかもしれません。
一番大切なのは、ハローワーク等に足を運び、ご自身で調べてみることです。
質問サイトで疑問をぶつけても、自分の働きたい地域での現状とは大きく食い違うことが多いです。
私の場合は、障害者雇用を目指した転職活動を始める前は、「障害者として働くこと、就職後のこと」ばかりが心配でした。
それ以前に「障害者として採用されること」がこんなにも大変なのかと悩みました。
障害者枠での大手企業の入社は簡単ではない、ただ挑戦権が与えられているだけ。
そのことに留意して、障害者としての就職活動を行うべきです。
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